アイドルの市場規模について② ~市場推移とGDPの関係性および2013年の予測~ | 外資系戦略コンサルタントの視点から見たアイドル・ビジネス

2012/10/15

アイドルの市場規模について② ~市場推移とGDPの関係性および2013年の予測~



久しぶりにブログの更新!

今回はアイドルの市場規模について

矢野経済が毎年出している、
「オタク」市場に関する調査結果の2012年版ができたようなので、
そちらから引用します。

「オタク」市場に関する調査結果 2012

詳細は以下のPDF版を見て下さい。
【PDF詳細版】「オタク」市場に関する調査結果



去年にもアイドルの市場規模について書いたので、
そちらのリンクは以下

アイドルの市場規模について①
(内容は超薄っぺらい)

こちらの市場規模の数値は
「アイドル」のコンサートチケット、CD・DVD、写真集、関連グッズ、ファンクラブの会費等。
と規定されているため、広告収入等の金額は算出されていません。

また、アイドルと言っても目次にジャニーズ事務所が含まれていることから、
「男性アイドル」及び「女性アイドル」の合算であることは注意して下さい。

当時集めた情報だと以下のグラフになりましたが、

















今回の情報を加味すると以下のように、
昨年の2011年は前年比13.1%増の630億と大きく市場規模が膨らみました。
(2010→2011年のGDPが1%減なので、他のマーケットと比較しても大きく成長しています。)




















しかも注意すべきは大きな成長率だけではなく、
去年の矢野経済レポートが2011年予測値として568億円と推定していることから、
2010→2011年でレポート作成者の推定を上回る成長をしていることに注目すべきだと思います。
(あくまで推定ですが、当レポート作成者は2011年夏までの定量・定性データを元に予測値を作成しているので、60億円近い誤差は、夏以降のアイドルシーンの活性化を予期していなかったことだと考えられます。)

しかも、この成長した市場の金額は、
昨年の韓流男性アイドルやジャニーズの成長寄与分を考えると、
男性アイドル側に大きなビジネスシーンの変化は見られないため、
純粋に女性アイドルグループの成長が寄与した割合が大きいと推測できます。
(ジャニーズアイドルの注目度は上昇しているためセールスは成長基調にありますが、
ジャニーズにSMAPや嵐のセールスを超えるグループが出ていないことなどから、
ざっくりで計算しても男性アイドルは10数億~20億円程度のアップだと考えています。)

そして2012年(今年)の予測値を
成長率14.3%増加の720億円と前年13.1%だった成長率をさらに大きく予測しています。
(個人的な感覚では逆に矢野経済の予測よりも少なく
成長率はプラスで10%~13%のレンジが妥当な気がします。
理由としては大きな市場成長に寄与してきたAKBの成長が鈍化しているので、
ももクロを含め他のアイドルグループが一般層を獲得しても前年の成長率は確保できないと考えています。)

矢野経済の調査では2010、11年の成長の理由を、

2010年→「AKB48」などが「国民的アイドル」となっているが、
市場を支え、拡大させているのは主に熱烈なコアファンである模様。

2011年→「AKB48」やその関連グループのコアファンが増え、
市場を支えていることから、近年、市場規模は拡大傾向である。

と記述していますが、

2012年は、
・48グループが取り込んだファンが他のアイドルに派生
・ももクロの一般層の取り込みに成功
・ロコドルによる地方における一般ファン層の取り込みに成功
・アイドルフェスの実施によりファンの他のアイドルへの派生に成功し年間の単価増

などの文言が出てくる気がします。

ちなみに700億円市場というと、
皆さんの身近な例で言えば豆乳と同じ市場であることを想像してみて下さい。
(やはり、映画市場と紅しょうがの市場が同じであると同様に、
日用品の市場は皆さんが思うより多いかったりします)

さて、
以前行ったアイドルビジネス飲みの時に出た話題なんですが、
一般層からの流入をメインとしてアイドルヲタクの増加は経済的成長を体験できない世代が、
自分の代わりにアイドルの成長を見て、応援することによって
自分の成長と代替して補完しているのではないかという話になりました。

これについては市場規模の指標と他の指標(日経平均株価、実質GDP、名目GDP)
との比較をしてみて簡単に考察したいと思います。

上記の仮説が正しければ、経済指標の増減とアイドル市場の増減は逆相関の関係になります。

まずは日経平均株価との比較は以下となります。














2006年から2012年の相関係数は-0.56とそこそこの逆の相関関係が見れます。
但し、アイドルブームのライフサイクルと、
近年の不景気が単純に重なっただけかもしれません。

そこで、数値として出ていない部分に関しても、
SPEEDやモー娘。の台頭、アイドル冬の時代と呼ばれるものを矢印でプロットした場合、
若干早めの先行指標としてある程度の逆相関関係が見ることができます。


次に、実質GDPと比較してみます。
















こちらの場合、相関係数は0.09と相関関係はないことがわかります。

2005年以前を比較しても実質GDPは成長基調のため、相関関係はなさそうです。

最後に、名目GDPとの比較
















こちらは相関係数が-0.62と平均株価と比較して高い逆相関の関係にあります。
しかも、2005年以前のアイドルブームと比較しても若干早い先行指標ですが、
日経平均株価と比較しても、面白い具合に逆の連動をしているように見えます。

日経平均株価はGDPよりもドラスティックに変化するため、
ゆるやかに変化する市場推移と相性は良くないといったところでしょうか。

そして実質GDPより名目GDPの方が逆の相関関係が高いのは、
デフレなどの物価と連動した金額ではなく、
売上金額や給与金額の絶対額の停滞によって、
人間の消費行動や余暇の過ごし方が影響を与えるからなのかもしれません。

あと、
「人間辛い時にアイドルにハマる」と言ったタワレコの嶺脇社長の言葉は、
基本的に前年比◯%UPというノルマを課せられる企業の売上目標値を達成できず、
精神的に苦しんでいる社会人がアイドルファンとして増えることを意味しているのかもしれません。

これ以上詳細な分析はデータの粒度上難しいのでしませんが、
それにしても、
他の市場では考えられないような逆相関の関係にあることは間違いないようで、
アイドルファンが増加している理由の一つとしては先の仮説が一因にある可能性は高いですね。

さて、最後に2013年のアイドル市場がどうなるかに関して矢野経済では言及してないので、
僕個人の意見としては

2013年は大きなトピックは、
◎頭打ち状態の日本市場ではなく、海外市場が注目される。規模は10%増程度の800億円程度

-海外
 ・円高は維持され日本の投資型スタイルは変わらない
 
 ・海外市場は駐在・現地人メンバー採用型の48グループが進出しているアジア諸国の成長が大きい
 
 ・非駐在型・日本人メンバー型の欧州におけるライブ実施等は2012年と変わらず大きく進展しない

-日本
 ・日本の景気は回復せずアイドルファンの増加は続ける(前述のとおり)

 ・各国の景気は回復せずナショナリズムの台頭で韓流アイドルよりも日本アイドルグループに人気が移行

 ・衆院選の結果で日本維新の会が躍進した場合、地方分権化が推進されロコドルへの注目が増える

 ・景気悪化、雇用状態の悪化により、ファンのアイドルへの支出単価は前年と比較して下がる

 ・日本における一般ファン層を増やすためには、未開拓の分野とのコラボレーションが2012年より重要になる

 ・1つのアイドルグループの人気に依存するのではなく、
  マスメディアを展開し一般人が気軽に(無料で)足を運べるアイドルフェスの開催が鍵
  (願わくば今年のTIFの無料スペースの拡大及びマスメディアでの宣伝)

-日本の各アイドルグループ
 ・AKB,ももクロが獲得した一般ファン層のターゲットに効率的にリーチさせるかが更に重要となる

 ・2012年で増大した東京主体のアイドルグループが、
  成長の鈍化する市場の中で如何に差別化できるかが更に重要となる。
   但し現在のアイドルシーンから独自のポジショニングを築くことは困難

 ・ロコドルへのマスメディアからの注目が集まり、
  これを利用して如何に地方在住の一般層ファンを獲得できるかが鍵

かなぁとざっくりと書きました。

いじょー

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